ソフトバンクの孫社長は「2015年にはデジタル教科書を全小中学校に」(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100729/350755/)導入するべきとの意見であるようだ。これは同社がiPadを販売しているからという理由もありそうだ。素直に賛成しかねる。
邪推なしに考えても、iPadを含めた電子ブックリーダはまだ紙の教科書と同じ使い勝手には達していないことが、Kindleの実験でも証明されている。KindleがだめでiPadならよいということはない。むしろ実績としては逆の方があり得る。
この議論をするには2つの点に注意する必要がある。
1つは、デジタル教科書と紙の教科書はどこまで同じであるべきか、また異なるべきかという点だ。マルチメディアが登場した際にもデジタルの優位性が主張された。実際、今の若者は本を調べるより先にWebを検索する。しかし、これはマルチメディアだからではなく、アクセスあるいは検索が容易だからだ。デジタル=マルチメディアだからといってすぐに教科書が分かりやすくなるわけではない。特にPCより非力な電子ブックリーダで再生するなら、たいしたことはできない。一方、重い教科書を持ち歩くことが少なくなったとも聞く。これにはデジタル教科書は効果があるだろう。しかし、電子ブックリーダが本だけでなくゲームもできるなら、はたして学校に持っていくことが許されるだろうか?一部地域では携帯も持ち込み禁止となっているとも聞く。ほとんどゲーム機といってよいiPhone/iPadならなおさらだろう。
2つ目は、どの年齢の子供にデジタル教科書が適しているかという問題だ。私見だが、小学校低学年はまだ体で字を覚える年齢なので、字が身に着くまではデジタル化すべきでない。早くても中学校、無難なのは高校からデジタル化することだ。多くの教科書を持ち歩く学年ほどデジタル教科書の効果は高い。本来は大学レベルの話だろう。
このまま終わりにするとデジタル化反対に聞こえてしまう。そこで補足すると、基本的には電子書籍には賛成だ。とにかく本を読むようにならないと文化も技術も衰退する。そのためには紙の書籍には限界がある。持ち歩くに困るほどの量になるからだ。しかし、それだけの読書をこなすには、読書のリテラシーが必要であり、それはある程度の年齢を経過しないと身に付かない。急がば回れともいう。子供に無理をさせる必要はないと思う。
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