福沢諭吉の「学問のすすめ」は、名前こそ有名だが、実際に読んだ人は少ないのではないだろうか?
これは口語体以前の古典中の古典でもある。さすがに歴史的には源氏物語には遠く及ばないが、現代文と言えないことは確かだ。よって、これを読みとおすのはかなり根気がいる。
今回、学問のすすめを読んでみて、有名な1章だけでなく、続きがかなり長いことも知った。しかし、そのすべてが理路整然と書かれていることに驚かされた。未来から過去を振り返ることは易しい。しかし、その時代の中にあって将来を見通すことは難しい。この本が見事に将来を予想していることは驚くべきことといえる。
明治は激動の時代だ。それは現代にも通じる。実のところ、現代は不透明ではあるが、明治ほど激動ではない。むしろ、深く静かに変動するから余計に分かりにくい。
明治には西洋化という単純な答えがあった。今は単純な答えが見えない。しかし、西洋化という答えも未来から見通した解答例に過ぎない。福沢諭吉は、その時代の中で、自分の頭でその回答にたどりついた一人だ。したがって、今の不透明な時代でも正しく読み切れば、未来を十分に見通すことは決して不可能とは言えない。
やや問題なのは、多くの識者が独自の予測を公開するので、かえって情報が混乱していることだ。よって、受け取る側も正しく判断できる能力が要求される。
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