心理学は何にでも応用は可能だ。よって心理学は分散処理にも応用できる。
最近、特に分散処理の心理的な側面が気になってきた。
以前にも指摘したかもしれないが、グリッドからクラウドの移行には心理的な側面が大きく関与している。簡単に言えば、心理的な理由でグリッドが失敗し、その反省からクラウドが生まれたとも考えられると言うことだ。それがすべての理由ではないが、同じ失敗をしないようにうまく回避している。
グリッドが失敗した心理的な理由とは、誰も自分のものを他人に只で貸そうとはしないということだ。これは必ずしも経済的な問題ではない。というのは有料でも貸そうとはしないからだ。実際、有料のグリッドがある。しかし、これは使う方もためらうし、貸す方も有料だからと言って積極的に貸すわけではない。というのは2つの問題があるからだ。
1つは有料と言ってもそれほど金額が大きいわけではないので、電気代をまかなうことはできない。だから、貸せば貸すほど儲かるわけでもない。そもそもそれほど儲かるなら企業が自分で行うだろう。有料ではあるが、基本的にはボランティアに近い。無料よりに積極的に参加する気にさせるという程度のものだ。
もう1つは他人に使われる不安だ。例えば、自分が使いたいときに使えないかもしれないというリスクや、ウイルスに感染するのではないかというリスクなど、漠然とした迷信がある。実際には、これらは心配する必要がない。しかし、積極的に貸そうという気持ちを起こさせる要因ではない。
元々日本にはボランティア文化はない。学校のボランティアも単位取得のために行うくらいだ。ボランティアに頼るしくみ自体が誤りと言える。
グリッドを成功させるには、明確なGIVE & TAKEが必要だ。あまりよい見本ではないが、P2Pは成功している。P2Pとグリッドにはいくつかの違いがある。もちろん基本的な技術自体が違うが、それだけではない。まず、P2Pではファイル共有などのアプリケーションがあり、著作権の問題はさておき、積極的に利用したいと思う人が多い。P2Pでは、利用者は他者にも利用させなくてはならない。ここに自然とgive & takeの対等の関係が成立する。もう1つは利用する資源がストレージであることだ。これはファイル共有など特定のアプリケーションの場合に限定される話だ。しかし、CPUを使われるのとストレージを使われるのでは、心理的に違いがある。まず、ストレージはかなり余っているのでけちなことを言う必要がない。しかし、CPUは常に限界近くまで使われることが多く、クレームも多くなる。
要は、所有者に気持ちよく資源を提供してもらうための方策が不十分であったと言うことだ。
グリッドの問題は複数組織にまたがることだった。それがグリッドの特徴の一つである仮想組織を成立させていたが、それ自体がグリッドの長所であると同時に短所でもあった。クラウドは単一組織で運営されるため、そのような問題がない。しかし、プライベートクラウドでは遅かれ早かれグリッドと同じ道をたどるだろう。なぜなら、単一組織で十分な資源を集めることは難しいからだ。そのときクラウドが再びグリッドの失敗を繰り返さないようにする必要がある。
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