iモード(i-mode)は先進的な試みで、個人的には高く評価している。少なくとも世界を席巻できるかもしれないという期待を抱かせた。残念ながら、実際には世界から取り残されてしまうことになったが。
世界の標準から大きくかけ離れて進化した技術を称してガラパゴスと呼ぶ。もちろん進化論を提唱したダーウィンがガラパゴス諸島で独自の進化を遂げた動物たちを発見したことにちなんでいる。
i-modeはガラパゴスだといわれる。残念ながらその通りだろう。日本では標準であるi-modeは世界では異端だ。では、auのEZweb(WAP)が世界標準かと言えば、こちらも対して流行っていない。それよりもPC用Webが圧倒的に多い。
今までPC用Webをアクセスできる携帯はスマートフォンに限られていた。しかも、必ずしも完全な互換性があるわけではなかった。しかし、iPhoneの登場で事情が変わってきている。
iPhoneでは、PC用Webをほぼ完全に再現できる。つまり、i-modeのような独自のWebではなく、インターネットのすべてのWebにアクセスできる。この差は決定的に大きい。そして、今後、世界はiPhone路線に追随する可能性が高い。その結果、i-modeは世界から取り残される。
なぜ、このようなことになったのかを説明するにはi-modeのしくみを説明しておいた方がよいだろう。i-mode以前にも携帯でWebをアクセスする方式がないわけではなかった。それはWAPだ。今でもEZwebで使われている。WAPは独自方式(HDML)なので、コンテンツを作成するのが難しい。コンテンツがないと利用者も少ない。つまり悪循環に陥る。そこで、i-modeではコンテンツを作りやすいようにHTMLでコンテンツを作成できるようにした。実際には、HTMLではなくサブセットのCHTMLでページを作成する。当時は、この割り切りが必要だった。HTMLを携帯で再現できる技術は存在せず、仕様を限定するしかなかった。しかし、技術が進歩し、それが裏目に出た。これはよくあることだ。本来は、CHTMLを年々拡張し、HTMLに限りなく近づける努力をするべきだったのだろう。事実していたのだが、不十分だったということだ。iPhone登場までに完全なHTML対応へ移行していなければならなかった。
CHTMLのおかげてi-modeのコンテンツは増えた。CHTMLのコンテンツは携帯のブラウザで直接閲覧できる。それが変換ゲートウェイを介さなければならないWAPとは決定的に違うところだ。しかし、変換ゲートウェイがないことが逆に問題にもなっている。例えば、変換ゲートウェイがあればHTMLをCHTMLに変換することができる。そうであれば、コンテンツ提供者はPCと携帯を区別せずにサービスを提供できる。しかし、実際には二重に開発しなければならない。
i-modeを正常な進化の道に戻すには、HTMLコンテンツを携帯でアクセスできるようにする必要がある。そうすればiPhoneと(ほぼ)同じことが携帯でもできることになる。そのために一番容易な方法は変換ゲートウェイを導入することだろう。今まで、サーバの設備費をかけずに安上がりに済ますことができたi-modeがNTTのコストを押し上げることになるかもしれない。また、二重にコンテンツを開発していた業者は少し複雑な気分になるかもしれない。携帯ならではのノウハウが次第に役に立たなくなっていく。
もう1つHTML化を妨げていたものはキャリア自身の料金体系だ。定額データ通信が前提でなければインターネットは成り立たない。これはキャリアが最もやりたくないことの1つだ。それを当然のように要求したところにiPhoneのすごさがある。しかし、手をこまねいている間に、iPhoneをきっかけとして、世界の携帯キャリアはデータ定額へ移行するだろう。本来は、技術的優位性を確保するには、日本のキャリアがいち早く先取りして移行していなければならなかったはずだ。
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