不況で就職が冷え込んでいる。
その影響で不人気な職業に復権の兆しが現れている。
例えば、アメリカの大学ではコンピュータサイエンスの志望者が10%も増加したという。日本では、SEは3Kとも7Kともいわれ敬遠されていたが、他の職業に比べて収入がよいので、今後は志望が増えるだろう。情報離れに一応の歯止めがかかったことになるかもしれない。
しかし、アメリカの動向がイコール日本の動向とは限らない。
SEになるにはそれなりの勉強が必要だ。そのために大学に行こうという気持ちがアメリカ人にはある。しかし、日本では勉強せずに手っ取り早くもうけたい人やもうけなくてもよいので勉強したくない人も少なくない。金持ちになりたいという気持ちがない人に金を目当ての職業を斡旋することはできない。
逆に、もうからないが人気がある分野は介護だ。介護が儲かるはずはない。
若年層が老年層を介護する。そのため一見すると、希少な若年層介護者の需要は高く、それゆえ高い報酬が期待できるように思える。しかし、それは成立したとしても一時的なものだ。
老年層は退職者かつ年金受給者であり、無条件に対価を値上げすることはできない。また、介護の質を維持するには、介護者と被介護者の間に一定の数的関係がなければならない。一人の介護者が介護できる人数には限りがあり、むやみに増やすことはできない。ここが決定的に他のサービスと異なる。逆に言えば、その前提を取り去ることができれば、例えばロボットなどを導入できれば、もうけることも可能になる。
しかも、人口が減少するゆえ、消費者である老年層も少なくなる。つまり、将来性がほとんどない。さらに、介護分野には外国人労働者が参入する。となれば、希少価値も失われる。
若い人が介護に興味を持つのはよいことだ。それは純粋に優しさである。そのような人たちは介護が儲からないことを承知で仕事を選ぶのだろう。
しかし、優しいだけでは生活できない。自分自身の生活を成り立たせることができなければ、他人の面倒も見ることはできない。必要以上の収入を得ることはないが、必要な分だけの収入が得られればよい。そのような人たちは金以外の価値を仕事に見いだしていると言うことだろう。ただ少し心配なのは、本当にもうからないことを承知で仕事を選んでいるのかと言うことと、その気持ちを長く維持できるのかと言うことだ。
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